SPANIKK ON MOVIELOG

21グラム

サスペンス, ヒューマン・ドラマ , , , , ,

製作年:2003年
上映時間:104分
ジャンル:ヒューマンドラマ、サスペンス
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
キャスト:ショーン・ペン、ナオミ・ワッツ、ベニチオ・デル・トロ

事故をきっかけに

この映画で最も感情移入したのはデル・トロでした。

デル・トロは元々ワルの前科者でしたが、信仰に目覚め、信心深いクリスチャンです。

彼はピックアップトラックを手に入れますが、それは自分の信仰の深さゆえに神が与えてくださったものだと信じています。

しかしそのピックアップで、ナオミ・ワッツの家族を轢き殺してしまうのです。

そしてナオミ・ワッツの死んだ亭主の心臓移植により命が助かったのがショーン・ペンであり、まったく交差することのなかった人たちが、事故をきっかけに人生の関わりを持ちはじめます。

ショーン・ペンが撮りたかった映画では?

ショーン・ペンは自身の第二回監督作品「クロッシング・ガード」で、車の事故で女の子を殺してしまった男デビッド・モースと、その娘を失った男、ジャック・ニコルソンを描いています。

この映画では罪を償って刑務所から出所するモースを、ニコルソンが復讐のために殺すことを決意しているわけですが、どうも消化不良な印象が否めず、イマイチ乗り切れなかった映画でした。

しかしこの「21グラム」は、事故によって殺してしまったデル・トロの心の葛藤がよく表現されています。

ショーン・ペンは好きな映画監督ではありますが、「クロッシング・ガード」と「21グラム」を映画として評価した時、やはり「21グラム」のほうが表現力も含めて豊かだった気がします。

神に裏切られたクリスチャン

デル・トロは信仰によってピックアップを得たと信じています。

しかしそのピックアップでナオミ・ワッツの家族を殺してしまったのです。

もしこのピックアップを神が与えてくだされなければ、自分が刑務所に入ることもなく、また、自分たちの家族や事故の被害者家族を苦しめることもなかったでしょう。

そう考えれば、神を呪いたくなる気持ちもよくわかります。

デル・トロは自分の腕にタトウとして彫られた十字架を、自らの手で焼いてしまいます。

信仰とはなんなのか

信仰とはなんなのか、何をもって幸せと呼べるのか、また何をもって不幸だといえるのか

そういったことを考えさせられた映画でした。

おそらくこのことは映画本編からすれば主軸のテーマではないかもしれません。

しかし最も心に響いたのはここでのデル・トロの葛藤でした。

この頃ちょうど遠藤周作の「沈黙」を読んでいたといった時期も重なり、クリスチャンの神に対する考え方、そして人々が苦しんでいてもなにもしようとはしない神の存在というものは、結局どういったことなのか、と自分の考えていたことにシンクロしてこの映画を観た記憶があります。

Leave a comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です